【大学在学中予備試験合格者インタビュー】

学部在学中に予備試験合格を目指す方が増えています。
予備試験を大学4年間で突破するには、勉強法の確立が重要と言われ、
予備校等の講座や教材も様々なものが出回っています。

そこで、こちらでは、学部在学中に予備試験に合格し、司法試験を突破した73期新人弁護士に行った
学部生時代の勉強法や学習の注意点などについてのインタビューを掲載します。

是非、予備試験合格を目指す勉強の参考にしてください。

岩井 直也 弁護士 の勉強法

簡単に経歴紹介をお願いします。

岩井 直也 弁護士

東京大学法学部第2類(法律プロフェッションコース)4年生の時に平成30年度の予備試験に合格し、大学卒業後、令和元年度の司法試験に合格しました。その後、令和2年に第73期司法修習を終えて、弁護士登録しました。

司法試験の勉強を始めた時期やきっかけ(志望した理由等)について教えてください。

岩井 直也 弁護士

法律の勉強は、大学2年生の夏ごろから始めました。東京大学には、入学時に専攻を決めず、2年生の夏ごろに進学する学部が決まる「進学選択」という独自の制度があります(推薦入試による入学者を除く)。私は、「文科三類」という科類で入学しましたが、この科類は主に、文学部や教育学部、教養学部などに進学する人が多い科類です。私は入学時点では、特に進学したい学部や将来やりたいことが定まっていなかったので、1年生の時に経済学や物理学、工学、心理学、法学、脳科学、芸術学など幅広い分野の講義を取ったり、新書を読んだりして、「自分に何が向いていそうか」を検討していました。1年生の秋ごろに渋谷秀樹著『憲法への招待』という本を読み、憲法の短い条文にさまざまな解釈を織り込んで現実の問題に対処しようとする営みを面白いと感じて、法学部に進んでみようと考えるようになりました。

法学部の授業は2年生の春から始まったので、その頃くらいから、法曹、民間への就職、公務員のいずれの進路を選ぶことになっても困らないようにと、法律の勉強を始めることにしました。最終的に法曹になろうと考えたのは、2年生の終わり頃だったと思います。その理由としては、民間企業や官公庁への就職でどのような専門性を身につけられるかが具体的にイメージできなかった一方で、法曹は“法律のプロ”というわかりやすい専門性を発揮できると考えたこと、難関といわれる司法試験に挑んでみたかったという好奇心があったからでした。

具体的な勉強法を教えてください。

岩井 直也 弁護士

私は、法律知識の大半を独学により習得しました。上に述べたように大学2年生から勉強を始めましたが、その頃にまず使用したのは、伊藤塾著『伊藤真試験対策講座』シリーズ、通称“シケタイ”です。いわゆる典型的な予備校本で、一冊にその分野の基本的な知識が大体載っているという優れものです。私は大学受験の頃から、ノートに覚えるべき知識をまとめて、それを何周も繰り返して暗記するという勉強法を取っていたので、法律の勉強でもこれを応用すべく、シケタイを読みながら核心的な知識をノートにまとめ、それをひたすら何周も読み込んで重要な知識を吸収していきました。これを試験の直前期まで、演習と並行して繰り返し行い、知識の定着を図りました。
ちなみに、あえてノートに知識をまとめたのは、分厚いシケタイは何冊も持ち歩くには重く、かつ、それほど必要でない情報も多々含まれていると考えたので、そういった無駄を省き、いつでもどこでも勉強できるようにするとの工夫に基づくものです。これに加え、短答試験に向けて肢別本や択一六法を繰り返したり、気になった箇所を基本書で確認したり、演習でつまずいた箇所を調べたりしながら、ノートを補強していきました。なお、大学の講義は資格試験に対応したものではないことから、「試験対策のあてにはできない」と考えていたので、学部時代の勉強はもっぱら独学に注力していました(期末試験は、独学や友人のノート等で対応しました)。また、予備校は料金が高く、知識のインプットであれば市販の本で足りると考えていたので利用しませんでした。以上が、インプットの勉強法です。

アウトプットの面では、さすがに独学だと厳しい場面があったので、予備試験の論文の直前に予備校の「直前対策講座」を一つ受講し、答案の作法や本番を想定した時間の使い方などを確認しました。司法試験の時は、伊藤塾が予備合格者向けに無料同然で答練を提供していたので、それを利用して、本番を想定した練習を繰り返しました。そのほか、各科目で知られた演習書(『事例演習労働法』や『刑法事例演習教材』など)を買ったり、図書館で借りたりと、なるべく本番直前まで問題を解き続け、勘を鈍らせないようにしていました。

在学中予備試験合格のためのおすすめの勉強法や注意点(ライフスタイル等)はありますか?

岩井 直也 弁護士

私の勉強法の核心は、「反復」と「コピー」と「費用対効果」にあります。知識を身につける場面では、とにかく何度も何度も反復することが有効であると考えています。法律の知識にせよ、答案の作法や書き方にせよ、何度も反復して頭に染みこませることで、自分のものになると思います。

コピーは、特にアウトプットの面において、優れた答案を読んでその構成や言葉遣いを真似ることをいいます。答練を受けると優秀答案や模範解答例がついているので、その構成やナンバリング、接続詞などの論理の流れや言葉遣いがとても参考になります。合格答案の多くは、こういった流れに沿って書かれているものが大半だと思われるので、これをそのまま真似して書くのが無難ですし、構成や思考フローの面でも無駄や遺漏がないと思います。我流の構成にこだわるのはリスキーです。

費用対効果という点では、私の経験から、試験に合格するのに必要な法律の知識を入れるためだけに予備校やロースクールに費用を投じるのは、費用対効果が低いと考えています。知識を入れる以上の付加価値に魅力を見出すのでなければ、本を読んで適宜アウトプットをするだけで、試験をパスするには十分だと思います。私がこれまでに挙げた本は、大半が古本屋で購入した型落ちのものや図書館で借りたものです。独学は向き不向きがあると思うので全員におすすめできる勉強法ではないですが、自分で勉強できる箇所は自分で勉強し、足りない箇所だけを予備校で補うのが経済的だと思います。 ライフスタイルという観点では、毎日勉強する時間帯を固定すること、ある程度の期間で勉強すべきことや目標を意識すること(たとえば、1週間後までにこの問題集を終わらせる、これを解くなど)、遊ぶ時間や息抜きの時間を必ず設けることを大事にしていました。これによって、毎日の勉強が習慣化し、苦もなく勉強を続けられました。

予備試験受験生に向けて、メッセージをお願いします。

短期で合格を目指すには、効率よく知識を身につけて、それを使いこなせるようになることが大事だと思います。そのためには、重箱の隅をつつくような余計な勉強は不要であり、常にゴールを意識して必要な勉強をすることが大切であると考えています。基本書を使うのか、予備校本を使うのか。予備校を使うのか、独学で行くのか、大学の講義でまかなうのかといった点は、予備試験を通過するための手段でしかありません。予備試験や司法試験を通過するためには、さしあたり過去問(あるいはそのレベルの問題)が解けるようになればよいので、そこから逆算して必要な知識を入れて、それを使いこなせるようになれば足りるはずです(基本書の隅に書いてあるようなことまで習得するのは、実務に入ってからでも十分であると思います)。したがって、この条件を満たす限り、どんな勉強法でもいいし、どんな本を使ってもいいと思います。自分の勉強法は自分で確立するしかありませんし、自分で納得して決めた勉強法が一番合っていると思いますので、「これだ」という勉強法を確立できたら、自分を信じて頑張ってください!