【第一弾】73期オンライン修習の実態情報!

司法試験に合格された皆様、おめでとうございます。
3月末から司法修習がはじまりますが、導入修習がオンラインで開催されることになりました。
そこで、オンライン修習(集合修習)を経験した73期弁護士にオンライン修習の実態や注意点を紹介してもらいます。
皆様の司法修習の参考にしていただければと思います。

保多 崇志 弁護士の場合

オンライン修習を終えて、感想はいかがですか?
保多 崇志 弁護士

「導入修習から8ヵ月ぶりに、司法研修所のクラスメイトと会える!」という期待に反して、全面オンライン修習になってしまったため、最初はネガティブな受け止め方をしていました。
実際に受講してみても、自宅のオンライン環境に少しでも不備があると、自分だけ回線が止まってしまい復旧に難儀するなど、当初は不便を感じる部分も多かったです。

しかし、毎科目で提出を求められる課題作成や即日起案対策の受験勉強といった、集合修習の負荷に追われるようになると、和光への通勤時間を省略できるオンライン修習の利点をありがたいと思う心境に変化していきました。講義の動画も、終了後2週間ほどはTeams上で公開されているため、速聴による復習が容易で便利でした。また、即日起案の成績評価をほかの修習生に知られることがない点も、ストレスの軽減に繋がったように感じます。

また、ほかの修習生に会えないという懸念もありましたが、Teams内のプライベートチャットを使って通話することで解消でき、Teamsの利用に慣れてきた時点では、オンライン修習の意義をプラスに捉えることができるようになりました。

講義や起案はどのように行われましたか?
保多 崇志 弁護士

講義は、教官のみが司法研修所の教壇に立ち、カメラに向かって話す映像をリアルタイムで中継する、という方式で行われました。修習生の立場としては、導入修習時に受けた生講義に比べて、「①パワーポイントの表示情報が把握しやすくなった」、「②講義動画の視聴による後日の復習が可能になった」など、メリットの多い講義形式だと感じています。

また、即日起案の個別講評も、個々の教官とお互いの都合のよい日時を調整し、土日祝日であっても講評をお願いできたので、例年よりも手厚い個別指導を受けられる環境が整っていたように思います。

一方で、後述の模擬裁判をはじめとする演習系科目は、司法研修所に集合して行う場合と比べて成果を上げにくく、消化不良に陥った面は否めません。また、意図的に修習生同士のグループ討論を多数回行わせることにより、生きた実戦知を身につけさせ、法曹として即戦力を育てるという研修所側の狙いがあると思われますが(民事弁護の教官談)、この狙いを実現できる環境の整備が、74期以降のオンライン修習の課題であると考えます。

模擬裁判のロールプレイングはどのように行われましたか?
保多 崇志 弁護士

模擬裁判は、民事・刑事ともに、約70名の修習生を7名前後、全10個のグループに分けて、各グループに特定の役割(被告代理人や弁護人の最終弁論担当など)を与え、一定期間グループワークをさせるという方式で行われました。そのなかで、提出書面をメンバーみんなで作成するのですが、Wordの共同編集をして、それぞれが随時書き込み、音声通話で相談しながらリアルタイムで文面を修正していくという作業は、とても新鮮でした。書面ができ上がっていく様子を見ながら、ほかの修習生の思考過程を追体験できるので、自分一人で作成する場合よりも、得られる成果は多かったと思います。

他方で、直に会っていないので、グループでの相談にまったく参加せず、事実上、人任せにする修習生が出てきてしまったり、本来、隣にいればすぐにできるはずの“ちょっとした相談や質問”ができずに、作業が非効率となった面もありました。また、何より、模擬裁判の口頭弁論期日や公判廷の本番演習が、画面越しで行われることでリアリティに欠けてしまったのが残念でした。

総じて、演習系科目の実習が、司法研修所に集合して行う場合に比べて成果が上げにくくなっている点は、74期以降改善していただきたいと思いました。個人的には、模擬裁判の本番だけでも、即日起案日と同様に人数を分けて感染症対策を万全にしたうえで、和光の司法研修所に登庁して実施するという方法をとってもよいのではないかと考えています。